姿


ドラマに多用されるシーン。

走り出す電車を追いかけるシーン。恋人が車に乗って去っていくのを黙ったまま見送るシーン。エスカレーターで二人がすれ違うシーン。

人間が移動するより早く人を運ぶ乗り物によって、人は出会いもし、別れもする。

もしこの世に乗り物が全くなかったら。恋愛の可能性は広がるんだろうか、それとも、縮まるんだろうか。

このドラマの最初の場面では、高校生らしくバスが乗り物の代表として登場する。

満員のバスにユジンを押し込むサンヒョク。しかし、自分は乗れなくて、入り口のガラスに貼り付いているユジンに向かって、先に行け、と口の動きで伝えるシーンがある。

yuri

入り口のガラスにぴったり押しつけられているユジンに、口の動きで「先に行け」と言うサンヒョク。

moは、姿。日本語だと「姿」は少し詩的な響きを持つが、韓国語では「形」「形体」という意味でも、広く用いられる。

xwは、助詞。「〜で」という意味で、手段、材料、方法などを表す。

だから、「口の形で」、つまり音声でなく口の動き方によって、サンヒョクは言葉をユジンに伝えたわけである。

けれどおそらく、サンヒョクは口の動きだけではなく、全身で「先に行け」と伝えたのだろう。

これを、日本語で、もう少し柔らかく訳すことはできないだろうか。

「口の形で」では何だか事務的な感じがする。「口の動きで」。まあ、これが正しいのだろうが、moの持つ柔らかさは伝わらない。

「口の動き方で」。よけいに事務的になる。かといって、「唇の動きで」とするとちょっと艶っぽくなりすぎるし、二人の距離がとても近い感じがする。

moは、つまりは使いようによっては微妙な距離感を表すことのできる、しかし訳しようによっては台無しになってしまうという、意外にやっかいな言葉なのである。

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