桜・岐阜


日本は世界有数のペンギン大国なのだそうな。

もちろん野生のペンギンが大量にいる、と言う意味ではない。動物園で飼育されている数が半端じゃないらしい。

だから、桜散る岐阜公園にも、ペンギンがいたりするのだ。

岐阜は愛知の北にある。

岐阜には、高校の修学旅行で行った、はずである。けれどスキーばっかりさせられていたし、バスで長野の方にも行ったので、「岐阜にいた」という意識はあんまりなくて、「長野でスキーした」ということになっている。

そういえば長野は岐阜と接しているのだろうか。地図を見る。

・・驚いた。長野どころか、北は富山、南は愛知、三重、東は長野で、西は滋賀に福井に石川と接している。修学旅行の帰りは一晩掛かったし、列車がスイッチバックまでしたから、ものすごく遠いようなイメージがあったのだ。滋賀に接しているから、直線距離なら愛知より近い。

それに、昔は北部と南部が飛騨と美濃に分かれていた。だから気候風土も違って、私が長野と混同したのも無理からぬ事なのだ、と、まだ言い訳。

ペンギンを見たときの旅行では、スキーはしなかった。季節は春。美濃は名だたる穀倉地帯、とにかく温暖である。

岐阜の町並みは綺麗に整っていて、商店街のアーケードもしっかりしていた。ふらっと入った蕎麦屋のとろろ蕎麦、確か、武蔵屋という名前だった。とろろが粉末なんかじゃなく、小さな固まりがしゃりしゃり残っていて、しかも器から溢れるくらいたっぷり入っていて、甘みの強いタレと、とてもよく合った。

これは幸先がいい。

食べ物が美味しいと、少しくらい嫌なことがあっても機嫌が良くなる。図書館の司書が芭蕉門美濃派の第一人者である各務支考を知らなくても、別にいい。自分で調べればいい。岐阜公園には腹に桜の花びらを貼り付けたペンギンがいるし、公園で売っていた甘い味噌の付いた小芋の田楽も美味しかったし、ホテルは綺麗だったし、だからあまりに天気が良すぎてうっかり日焼けしたって、別にいい。

けれど、やっぱり失敗はある。

決して自慢にはならないが、私は方向音痴である。こっち、と言って行く方向は、間違いなく間違えている。だからこっちだと思った方向と逆に行くとやっぱり間違えていて、もとに戻って最初にこっちだと思った方に歩いても、やっぱり間違えている。

岐阜に、関というところがある。関は古くからの刃物の街である。なんで詳しいのかというと、PRキャッチフレーズの佳作に入って、賞金を貰ったことがあるからだ。古式ゆかしいって、新しいと思う、だったか、そんなのだった。

地図を見ると岐阜の中心地から近いので、ついでに行ってみようと思った。周囲の地図までコピーして、長良川鉄道に乗って、行った。いや、行こうとした。

けれど、辿り着けなかった。

地図の通り、川に沿って歩いた。なのに、どう考えても違う方向に進んでいる。目の前に迫ってくる山の向こうから、轟音とともに飛んできたのは自衛隊の飛行機。

・・小牧?

そこがどこなのか知っていれば迷ったりはしない。ホテルに戻ってよくよく考えてみる。川に沿っていく道、は、地図上に二本、九十度に交差して、あった。 私は北に向かう道を歩こうとしていた、はずである。

あ。

九十度、間違えたのか。

地図には方位が示されていなかった。私は、北に向かうつもりで実は東に向かっていたのだ。川に沿った道、川に沿っているというだけしか地図では分からない、道。

それでもまあ、岐阜饅頭という、鵜飼いの鵜の焼き印が押してある饅頭も、電車に乗っている間にぺろりと食べてしまうほど美味しかったし、別に、いい。


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