BGM・2

森永製菓のウィダーインゼリーが他のゼリー飲料より売れ行きが良くなったのは、木村拓哉を起用して以降なんだそうである。

確かに、彼は走り回る姿が美しい。鹿みたいだ。随分前のドラマ「ギフト」では、艶のあるスーツ姿でとにかく走り回って、いろんな人に贈り物をしていた。

ゼリー飲料の長所は、水分がゆっくりと吸収されていくところにある。

がぼっ、と一気に飲んでしまう普通のお茶や清涼飲料水は、その成分が実際に体に取り込まれるのは180cc位が限度、それ以上は吸収される前にそのまま外に出てしまう。

その点、ゼリーはとろんと胃に残り、柔らかい満腹感も与えてくれる。喉の渇きはいやされて、しかもすぐさまトイレに走る必要もない。

だから、試験の前、特に時間の長い語学の試験の前なんかにはゼリー飲料をお勧めしたい。冷やし過ぎず、落ち着いてゆっくり飲んで。これで、聴き取りのテープに集中したいときに喉の渇きや膀胱に集中しなくて済む、のである。そして、ウィダーインゼリーは、他のよりも薬臭くなくて美味しい、ような気がする。

さて。

謎の髭の男を追いかけ回す木村拓哉のバックに流れているのは、KISSの「ROCK AND ROLL ALL NITE」である。NITEの綴りはこれで正しいようだ。

木村拓哉が「おーえっ!」と怒鳴ってからすぐの歌詞は、サビの「ROCK AND ROLL ALL NITE, A PARTY EVERY DAY」だから、いつも適当なところでコーラスを入れて歌ってみることにしている。

それにしても、この頃いろんな番組やCMで70、80年代の曲を耳にする。

この間も、子供向けクイズ番組で、クイズの答えじゃなくて曲名をばんばん答えてしまった。

テレビ朝日系列の「バーチャQ」は、伊集院光が真ん丸な宇宙人になったりデビ夫人が魔女(似合いすぎ)になっていたりして、それは面白いのだけれど子役が邪魔だった。

子供番組だから子供を出しておけば受けるだろう、というのは実は大きな勘違いで、子供は子供が大嫌い、特に自分を差し置いてテレビに出てる子供なんて大嫌い、しかもその子供の後ろには母親がいて、その母親はもっと子供嫌いなんである。だから、子供に受けたかったら若い綺麗なお兄さんをちらちらさせた方が、よっぽど視聴率が稼げる。近頃の仮面ライダーをご覧。

クイズはグラフィックを駆使したもので、いろんなものが曲がったり伸びたり縮んだりして、少しずつ元に戻るうちにそれが何かを答える、と言うものだった。四十前の年寄りの目はちらちらするし、こっちで答えが出ているのにまだ引っ張ったりして、つまりはせっかく高い技術があるのに宝の持ち腐れ、の番組だった。

でも、BGMはよかった。

だから、答えが「信号機」だったり「テレビ」だったりするのはもうどうでもよくて、「ラジオスターの悲劇っ」「どうもありがとミスターロボットっ」と画面に向かって叫び、誰かが回答しようとして画像と共にBGMが止まると、「続けて聞かせろっ」とむなしい要求を繰り返してしまっていた。

誰が子供なのか、分からない。

カバー曲がヒットすると、必ず誰かが言う。「新しいものを産み出せなくなっていて、行き詰まっている」「いや、若者の価値観が多様化して古いものに新しさを求めようとしているのだ」

まあ、どっちでもいい。たぶん、BGMに私の好きな曲が多用されるのは、テレビ番組を作る側が私と同じような年代になってきて、つまりは私がそれだけ年を取ってきたということだ。四十年近くも生きていれば、古い曲を今の若い人より少しばかりよく知っているのも当然だ。70年80年代の曲なら、ソースの音もよく残されていて、カバーがたやすい。それだけのことだ。

Cheap Trickはビートルズの曲をよくカバーしていて、私はそれを知らずに全部オリジナルだと思っていた。そんな私にとって、カバーの否定はCheap Trickの存在を否定することになる。

おおげさな、って。

生徒手帳にロビン=ザンダーの写真を入れていたら、洋楽を知らない友達に「この人格好いいなあ、彼氏? 」と言われてマジに嬉しかった私にとっては、決して大げさなことではないのだ。

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