ガッテン


1行め 卵三個に砂糖60グラムくらいを入れて人肌程度のお湯で暖め、泡立てる。

2行め 白っぽくもったりとなったら、小麦粉80グラムとベーキングパウダー小さじ二杯をあわせてふるったものと溶かしバター大さじ2を加えて、粉っぽさがなくなるまで混ぜる。

3行め 型に流し込み、180度に暖めておいたオーブンで焼く。串を刺してみて中まで焼けていたら出来上がり。

珍しく分量を正確に書いてみた。この分量だと、18センチのケーキ型にちょうどいいだろう。 12センチなら卵二個で砂糖は40、小麦粉は60でベーキングパウダーは一杯。ケーキ型の用意は最初にしておこう。最近は内側に紙を貼り付けなくていいテフロン加工のケーキ型も出てきた。

そういえば昔はグラシンペーパー(クッキングペーパーみたいなつるつるしたやつね)がなかなか手に入らなくて、押入に大量につっこんである包装紙で代用したものだった。ケーキの型にバターを薄く塗ってから、丸と長方形に切り取った包装紙を張り付けていく。百貨店のマークが透けて見えて、なかなかおしゃれだったりした。

人肌程度のお湯。しかし、これはそんなに気にする必要はない。卵は30度くらいになればよいからだ。だから、触って熱いと感じない程度のお湯でボールを暖めながら混ぜて、砂糖が溶けたらお湯から外す。むしろ、お湯が熱すぎると卵がボールの縁で固まったりなんかするので、湯沸かし器のお湯で十分だ。

白っぽくもったり。この「もったり」は料理用語なんだそうである。NHKの「ためしてガッテン」で、そういっていた。もったり。どんなのがもったりか。

見た感じは、マヨネーズである。泡は細かくて見えないほど。

そして、爪楊枝を立てると、倒れずにそのまま、まっすぐ沈んでいく。

これは本当にガッテンだった。確かに、ある瞬間から倒れなくなるのだ。ガッテンによれば、この状態では空気が全体の75パーセント含まれているのだそうな。

その状態を手に入れるためには、泡立てる機械(ビーターとかホイッパーとかいう)の最高速で、くるくる軽快に回しながら、ボールも時々回しながら、で、2分程度でできあがる。ボールはなるべく大きめのものが混ぜやすい。爪楊枝が立ったら、最後の仕上げに最低速で三回ほど混ぜて、泡を均一にする。

そして小麦粉である。これはなるべく冷やしておくのがいい。ふるったらボールごと冷蔵庫に入れておくと、だまができにくくなる。切るように混ぜて、バターも混ぜて。

さあ、型に流し込もう。あらかじめ暖めておいたオーブンへ。オーブンの癖にもよるけれど、20分焼けば十分なはずである。

私は、オーブンを持っていない。さあどうするか。

鍋に直接流し込んで焼く、という手がある。厚手のステンレスの鍋だと可能なのだが、引っ越してレンジの火力が強くなってから、どうしても焦げる。

まず記念すべき第一回のガッテンケーキは、縁がぴっしりと焦げた。鍋が二重になったような具合である。しかも分量を間違えて多く入れすぎたので、膨らんではみ出して蓋がくっついた。

しかし、もっとすごい失敗もある。

通信販売でケーキや和菓子のキットを買うことが時々ある。小麦粉や砂糖や餡、カスタードクリームやイチゴのソースのパウダーなどが使い切りの分量でセットになっていて、ケーキの型やクッキーの抜き型などもついてくる。もちろん作り方を書いた紙も入っている。その中に、シフォンケーキがあった。

それは電子レンジで作ることになっていて、しかし電子レンジを持っていない私は、オーブントースターで作ることにした。

しかし。焦げた。いや、燃えたのである。紙が。

トースターの中で、紙が燃えたのである。ケーキの種に直接触れず、はみ出していた紙が、トースターのヒーターに触れて、燃えたのである。

炎はトースターの扉から這い出して空を嘗め、灰になった紙は黒い扇のようにふわふわと舞い踊った。

心ならずも見入ってしまう。台所の火はたいていレンジの五徳の下で青く大人しく小さくしているので、赤い元気な炎を見ることは滅多にないのだ。

あっ、火事になるっ。布巾で叩いて火を消す。もちろん、シフォンケーキは失敗だ。

これは、失敗というより事故である。ちょっと考えれば分かることだった。電子レンジは火を使わないのだ。だからラップも使えるのだ。オーブントースターにラップ使うか? 使わないだろ。お馬鹿だった。反省。

そして、二回目。一回り大きな鍋で焼いてみた。今度は、底だけが焦げた。しかし、分量はちょうどだったので、焦げなかったところはしっとりして美味しかった。三回目。中心から半径の二分の一のところまで、うっすら焦げた。つまり直接火が当たった中心部だけが焦げたのだ。でも味は上々、プリンみたいにぷるぷるだ。

四回目。もっと大きなシチュー用の鍋を空だきして、その中にケーキ型を入れて焼く方法を試してみた。う、やっぱり焦げた。でも、時間を少し短くすればいけそうだ。

いずれの場合も、焦げていないところはまるでカステラのようにしっとりである。だから、泡立ての失敗ではない。種は上手にできているのだ。ガッテンになるまできちんと泡立てさえすれば、泡立て不足に由来する失敗は回避できるのである。それが証拠に、薄く広げてオーブントースターで焼いたときには、ふわふわ、見事成功。焼き上がったケーキに挟むはずのソースは、緩すぎて全部流れてしまったけれども。

さあ、レンジで焦げずに焼きあがる日はいつのことか。オーブン買えばいいだろう、と言われそうだが、ここまできたら、鍋ケーキを私なりに完成させたいのだ。

次回は、火をもっともっと小さくして、再挑戦だ。

追加。ケーキや和菓子の通信販売をしているのは、フェリシモです。ちょっとお高いですが、イタリア式フランス式カフェテリア式、ズッパ=イングレーゼにズコットにシブーストにと種類も豊富で、簡単に本格的なお菓子が作れます。他にも、東急ハンズなど食料品をたくさん扱っているお店でも、手作りキットを見かけます。

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