外国。

外国とはすなわち自分の外の世界である、ならば日本は内の世界なのか。私の内側には日本はあるのだろうか。それとも、日本は私の一部で、もしかしたら世界も私の一部なのだろうか。

心の内では未熟な認識論をこねこねしながらも、どんどん増えていく友達とわいわい言いながら、小学校での生活も五年目となります。

四年の時に新設の小学校ができて、友達がごっそり居なくなりました。

仲の良かった友達と一緒に先生が写真を撮ってくれて、気がつかないうちに写真の中で何だか私も友達も子供の顔ではなくなっていて、中学になればまた会えるのに、もう二度と会えないような気がして、ああ転校生ってこういう気分を味わったのだな、と改めて感じたりしました。

それでもあっという間に、机は教室に一杯になります。

雨漏り。

私の卒業した小学校は私がいた頃からすっかり古くて、市内でも古い方に入りました。創立百年記念がついこの間だったのですから、もちろんのこと戦火も経験しています。

戦時中はジャガイモ畑になったという校庭の端に、講堂がありました。

今で言うところの体育館です。でも、やはりそれは講堂と呼ぶほかないもので、木造で油の匂いがして、風が強いと一面のガラス窓がびしびし鳴って、雨が降ると雨漏りしました。

雨が降る日に体育館代わりに使うのに、雨漏りするというのは本末転倒で、しかもその雨漏りの仕方が尋常ではありませんでした。おそらく漏斗の形に穴が開いていたのでしょう、屋根に降った全ての雨水がたまり、滝のように流れ落ち迸るのでありました。

それはマイクを使っている先生の声が聞こえなくなるほどで、声を振り絞る先生の姿は、滝に打たれる修行僧のようでもありました。

おそらく屋根が腐ってしまったのでしょう。講堂の取り壊しが決まりました。古い建築なので重厚感はありましたが、床がもこもこしていたのでいつ抜け落ちるかと実はみんな怖がっていたので、ほっとしました。

思い出。

その時、ある転校生がこんな作文を書きました。

「私はまだ転校してきたばかりでよく分からないけれど、きっと古くて綺麗な講堂には、みんなの思い出がいっぱい詰まっているのだと思います。」

思い出、ねえ。

ぼこぼこの床はいつも油の匂いがして、うっかり転ぶと泥に入ったよりも汚れて、しかもその汚れは落ちにくく、さらにはちょっと走っただけでガラスがバリバリ鳴って全体が揺れるので、怖くて仕方ありませんでした。

でも、確かに、綺麗な建物ではありました。子供の足には少し高すぎる階段や、どっしりと重い屋根、古いので真っ平らではなく、緩やかに波打った窓のガラス、いや、硝子は、鉄筋校舎のガラスよりはるかに趣がありました。

それに気づいたのは、転校生でした。

そして、ちょっぴり鈍くさかったその転校生のことを、私はその作文を読んで、見直したのでした。

  鹿熊の われも仲間よ 雪の道         正秀

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いかがでしたか。炬燵出そうか出すまいか。

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