三。

三は人気のある数字です。地名や屋号になることが多く、そのまま会社の名前にもなったりします。

三文字は酒屋さん、三井は今にも通じる財閥。ふっと本棚を見上げただけで、あります三省堂。三田は地名ですが関西にも関東にもあり、関西では「さんだ」関東では「みた」と読みます。

神戸で三宮と言えば繁華街。でも、宮と言うだけあって、ちゃんと三宮神社という、小さいけれど綺麗で可愛らしい神社があります。

世田谷の三軒茶屋周辺は、関西人の私からすると「東京風情」漂うところだと思います。

砂利がきっちりと敷き詰められた細い路地を真っ直ぐ歩いていくと、路面電車の駅があります。エレベーターも階段も、改札すらも通ることなく駅のベンチに座れて、民家の塀を越えてきた陽気なオレンジ色のノウゼンカズラの、くるりと渦を巻く先っちょが風に揺れているのを眺めることが出来ます。

踏切の近くには小さな、明るい感じの万屋さん。特に用もないのに立ち寄って、そんなに好きでもないのにラムネを買ったりします。

謎。

夏と言えば東京に出かけていた時期があります。

大学には、大きく分けて三種類あります。普通に昼間に通うのと、夜間に通うの、そして通信制。

三十歳を目前にして通信制の大学に入学したのは、もう十年も前のことになります。新幹線に乗ってしまえば三時間ほどの距離ではありますが、そこはやっぱり、東国。あれこれ文化の違いがありました。

食べ物云々は好みが違うので当然なのですが、いちばん不思議に思ったのは、家々の軒先に置かれた金魚鉢でした。

いや、金魚鉢というより、金魚瓶でしょうか。梅干しなどが入っている茶色い瓶、あれです。そういう口の広い瓶に、睡蓮の丸い葉っぱが浮かんで、小降りの金魚が数匹。空気のポンプがあるのとないのがあります。

不思議だったのは、どれもいつも口ぎりぎりまで水が溜まっていて、あふれるということがありません。毎日手入れして水の量を調節しているのでしょうか、それとも外から見えないだけで、ぎりぎりに水が来るようになっているのでしょうか。

本当に不思議で、毎朝覗き込んでは、首を傾げていたものです。

水。

東京は、川が少ないのだそうです。そういえば、ちょうど江戸市中の両脇を、大きな川が流れています。京都は真ん中を川が通り、大阪は水路が張り巡らされ、名古屋は巨大な河が田畑を肥やす。考えてみれば、東京、つまり江戸だけが自然の大きな河から外れたところで発展しました。

それは、私が育った播磨地方にも言えます。加古川という大きな河があるのはあるのですが、その他にはほとんど目立った河がなく、しかも非常に気候が安定していて雨が少なく、稲作のための池が千年の昔から造られ続けてきました。

ですから地図を見ると、大小の池が数え切れないほどに載っています。

しかし、江戸は消費都市でした。農耕都市ではありません。武士や職人の数多住まう、しかも男女の比率が七対一という、当時世界一の大消費都市でありました。

そんな江戸の真ん中に、農業用のため池など作れるわけもなく、けれどもそこは人間です、水は恋しい。

江戸城のお堀より、神田川の流れよりささやかでけれど身近な、心和む金魚の瓶に、私は江戸の、そして東京の粋を見るのです。

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いかがでしたか。いやあ、夏風邪引いてしまいました。みなさんも気を 付けてくださいね。

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