百。

百と言えば、百万。もちろんこのマガジンの総発行数ではありません。

レコードが売れなくなっているのだそうです。あの宇多田ヒカルさんでも百万枚を切るのだとか。

このマガジンの講読者数は400名程で、こんな地味な内容なのに結構多いなあと思っています。ですから百万以下でも相当なものだし、歌手の数も昔よりずっと増えているし、ばらつくのも当然で、しかしふと自分のことを振り返ってみると、何年もCDを買っていませんでした。

買うどころか、借りたこともない。

まだLPしかなかった時代、私はお年玉を貯めて大都市に行き、大量に輸入レコードを買いあさっていました。その頃からレコードの値段自体はほとんど上がっていなくて、むしろ下がった位なのに、ちっとも買わなくなった。

そういえば、CDになってから、私の音楽に対する関心はがっくりと減速したような気がします。手軽に聴ける、編集も簡単。音質の劣化も少ない。

けれど、カセットデッキを待機させ、アンプのボリュームを絞っておき、レコードに針を落とす瞬間の、あの「ぼん」という音が収まったらボリュームを一気に上げる、という手間までかけて何本もお気に入りテープを作ったのは、もう昔のことです。

ぶらぶら。

とはいえ、音楽に全く興味がなくなったわけではなく、CDランキング番組はよく見ます。その中で、百万に達さずともトップに立っていることは間違いない宇多田ヒカルさんのビデオクリップ(DVDクリップというべきでしょうか)の中に、伊藤若冲(じゃくちゅう)を見つけました。

歌う彼女の後ろ、ちょうど隠れてしまうのですが、白い縦長に丸い牙のある象が、ゆっくりと首を左右に振っている。

あれは、「樹花鳥獣図屏風」の右にいる象です。筆者は誰なのか、諸説があるのだそうですが、画面に無数の灰色の升目を描き、その中を塗ったり残したりすることで動植物をこれまた無数に描いていく、こんな手間の掛かることをする画家が、若冲の他にそんなにいたとも思えません。

歌の題名は「SAKURAドロップス」。彼女を包み込む鳳凰も、もしかしたら若冲の「老松白鳳図」からとったのかも知れませんが、羽があまりに風になびきすぎて、生っぽい。

私はDVDプレーヤーを持っていないので全編を確認は出来ないのですが、他にも若冲のようなそうでないようなモチーフが、いくつかあります。

人気。

放映は終わったようですが、サントリーの「聞茶」のコマーシャルでも、井上陽水さんが若冲の鶏の上を転がっていました。

三百年を得ても色褪せない若冲の高い技術が、映像に携わる人々の心を掴むのも、当然と言えば当然のことです。

でも、ちょっと、なんだか、なのです。

そうやって伊藤若冲の名前が広まっていき、人気が出て、ブームのようになって、こんな画家が江戸時代にいたんだあ、凄いなあ、ということになれば、江戸時代の画家に対してみんなが持っている固定観念も、ちょっとは変わるかも知れない。

けれど、ブームは、ブームです。

彼はもうこの世にはいません。確かに、新たに発見される画もあるでしょう。ブームが来れば、再発見される数も増えるかも知れない。

けれど、ブームは、ブームです。ムーブメントたりえません。

サッカーの試合を堀に飛び込んだり町中で花火を上げたりする理由に使っている若者達をみると、ワールドカップが終わった後の空しさを今から想像して、江戸絵画ブームなんて絶対来て欲しくないと願う、私はやっぱり江戸絵画のファンなのでしょうか。

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いかがでしたか。9日はハングル検定試験でした。試験の階級が増え て、易しくなってました。たぶん合格。たぶん。秋も受けるぞ。おー。

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