ケースその1。彼は会社が違法なカルテルを結んで不当な利益を上げていることを告発し、窓際に追いやられた。

しかし彼は退職せず、息子が大学を卒業し、就職するのを待って会社を報復人事で訴えた。ひどく安い月給と屈辱的な仕事に30年耐えられたのは、ボランティアで続けている美術館の案内という、心休まるひとときがあったから。そしておそらく、妻のおかげ。

裁判を起こすまで、父がそんなものと戦っているのを知らずにいた息子。

テレビの画面には出ない、普通の家庭ならどこにでもあるいざこざもあったことだろう。それくらい彼の家庭は普通の家庭で、しかし彼の息子は、父をそれまで以上に尊敬するのに違いない。

ケースその2。彼の息子は半端なタレントよりしょっちゅうテレビに出て、野球やらITやら株やら何やら、あっちこっちで物議を醸している。

特に変わったところのない、普通の息子だった、と彼は言う。息子の部屋は決して広くない和室で、でもきちんと片づいている。

もし無一文になって帰ってきたら静かに迎えてやろうと思いますよ。彼は静かに言う。

ケースその3。彼は何人もいる父の妻や愛人やら側室やらの息子のうちの一人で、父の言いつけに素直に従ったので、逮捕された。

何人いるか分からない兄弟に告発され、拘置所にいる彼は、特別扱いは断って、他の受刑者と同じ待遇にしてくれと言っているという。

彼の父は、兄弟同士を競わせて彼の王国を巨大化させようとしたのだろうか。

それとも、とりあえず息子を量産して、自分の言うことを一番大人しく聞きそうなのを探すつもりだったのだろうか。

なんにせよ、今になってまるで他人事のように矢継ぎ早に告発するのも、彼らの父一流のやり方なんだろうか。

もしかして、全部折り込み済み、なんだろうか。

アメリカのドラマや映画を見ていると、とにかくカッコいい父親が出てくる。

アメリカの大統領はつまりは父親の典型で、だから大統領は白人の男性でなければならない。

そんな父親の国、アメリカは、アメリカは世界に民主主義を広げる義務がある、とか言い出したらしい。

英語を話せない人が2割、内戦状態でもないのに銃で亡くなる人が世界一、保険制度が整わず麻薬に汚染され。そういう国が民主主義国家なら、イラクはとっくに民主主義。

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