二年前、内閣で橋本龍太郎氏のことを少し書いた。

早いもので、あれから首相が二回替わっている。田中真紀子氏が更迭されて、小泉氏の支持率も落ち着いて、参考人質問が視聴率三十パーセント近くを稼いだり、まあ、いろいろあった。

ついこの間、円安になってはじめて気が付いたが、景気が悪いのに円はずっと高かったのである。ちょっと考えればすぐ分かることだったが、円が高すぎると輸出に頼っている産業に打撃を与えるんである。遅ればせの円安が招いたか、株価も上がってきた。

だから最悪の状態からは抜け出した、というけれど、春闘では軒並みベアゼロ回答で、しかも後になってから値切ってきたりしている。

そういうことをしているからいつまでも景気が上向かないんだと言い続けて、さあ、もう何年になるだろう。

ひさしぶりに、橋本氏の姿をテレビで見た。改革を最初に言い出したのは橋本内閣で、最初は主婦層を中心にとっても人気があって、けれども佐藤孝行氏と消費税上げのおかげで信頼失墜、支持率が落ち込んでしまった、と、小泉内閣と比較がされていた。

鈴木宗男氏の証人喚問と前後して、橋本氏は入院してしまった。今、橋本派の顔は野中広務氏で、だから歯切れ良く外務省を非難したりもするのだ。

私はどこの政党も支持しない。けれど、橋本派の政治家の持つ人間味には、ときどき胸打たれることがある。銀行の貸し渋りに青筋建てて怒っていた、幹事長時代の野中氏。彼は小泉氏の靖国神社参拝について、私が今まで聞いた中で一番納得できる理由で反対した。政治家が靖国を参拝しないことで、そこに奉られておられる方々には戦争の責任を取って頂く。責任を取ると言うことは、そういうことです。

小泉政権も、支持していないわけではない。これだけ政治家の汚職やら外務省の不祥事やらがぼろぼろ出てくるということは、ぼろぼろ出しても大丈夫だと思う人々がいるからである。

その人々は、これまでの政治のやり方はもう通用しないのだと思っている。ただ、これまでのやり方が間違っていると思っているわけではない。いずれにせよ、何が正しくて何が間違っているのかなんてもともと意味がないのだ。とにかく今のうちに、自分の手が全面的に汚れきってしまわないうちに、他の人になるべくたくさんなすりつけてなるべく早く逃げよう、と思っている。

それでも、地元に利益誘導したり口利き料をふんだくったりというやり方がもう通用しないのだと政治家やその周辺の人々に思わせた、小泉政権の功績は、大きい。

でもなんだか、私もこう、揶揄してみたくなる。

小泉の 水の清きに棲みかねて もとの田中の濁りなつかし

濁りが懐かしいと泉から逃げ出すのは、誰だろうか。抵抗勢力は、水の清さを際だたせるためにいる。逃げる必要はない。

ならば、逃げ出すのはその他の古い体質の政治家か。彼らは議員でなくなれば何人でもなくなる。

ならば。これまで政治家を裏金で操り、利益を得てきた人々か。

その人々が、その人々でなくなることはない。これからの政治家を、これまでの政治家と同じに作り変えていく、それだけのことである。首のすげ替え。それだけのことだ。

誰が逃げるのだろう。逃げ出すのだろう。

そして、かつて泥中の蓮のように美しく咲いていた橋本氏は、今の政治をどう見ているのだろうか。

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